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すばる望遠鏡とハイパー・シュプリーム・カム (HSC)

すばる望遠鏡は、富士山よりも高い標高4205メートルのハワイ島・マウナケア山頂に建設された、日本の(国立天文台の)望遠鏡です。口径8.2メートルという、世界最大級の一枚鏡を持った光学赤外線望遠鏡望遠鏡です。

すばる望遠鏡は、8メートルの望遠鏡にしては画期的な広視野のカメラを持っています。大きな望遠鏡ほど一度に見られる空の領域が狭くなりますが、鏡筒の一番上に搭載された主焦点カメラでは、広い視野を撮影することができるのです。主焦点カメラ Suprime-Cam(シュプリーム・カム)は、望遠鏡のファーストライト直後の1999年より稼働し、最も遠い銀河候補の探査などで数々の成果をあげました。2017年に役目を終えましたが、2013年からは新型の超広視野カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC: ハイパー・シュプリーム・カム)が主焦点で稼働しています。

HSCを搭載したすばる望遠鏡の写真 すばる望遠鏡の主焦点に搭載されたHSCの写真

図1:HSC の写真。
(左)すばる望遠鏡に搭載され、性能試験観測が行われている HSC。上空にはプレアデス星団 (和名「すばる」) が見えています。 (クレジット:藤原英明/国立天文台)
(右)すばる望遠鏡主焦点に搭載された HSC。人の身長と同程度の、巨大なカメラであることがわかります(レンズ筒の長さ165 cm、重さ3トン)。望遠鏡の一番上の部分、青い「トップリング」がまわりに見えています。 (クレジット:国立天文台/HSC Project)

HSC は満月9個分の広さの天域が一度に撮影できる、世界最高性能の超広視野カメラです。独自に開発した 116 個の CCD 素子を配置し、計8億7000万画素を持つ巨大なデジタルカメラです。すばる望遠鏡はHSCを使って、アンドロメダ銀河のほぼ全体を1視野で捉えることに成功しました。広い視野を持つ HSCの登場により、観測の効率が大きく高まっています。

HSCで撮影したアンドロメダ銀河 視野の比較

図2:HSC の視野。
(左)すばる望遠鏡に搭載された HSC がとらえたアンドロメダ銀河 M31 の姿。g, r, i バンドの画像が青、緑、赤色に対応し、それぞれ 10 分積分 (露出) です。(クレジット:HSC Project / 国立天文台)
(右)すばる望遠鏡に当初から搭載されている Suprime-Cam (左下、中央) と、今回 HSC (右) が写し出したアンドロメダ銀河 M31 の視野の比較。黄色い枠は過去に Suprime-Cam で撮影された領域を示します。左上には月の典型的な見かけの大きさが示されています。(クレジット:国立天文台)