hscMapの操作方法
- 操作方法説明動画(2018年版)
- 2018年3月国立天文台トピックス「すばる望遠鏡がとらえた宇宙を身近に!」 ※この動画・サイトでは、hscMapを「HSCビューワ」という名前で紹介しています。
基本操作
まず、hscMapへアクセスしてください。
http://hscmap.mtk.nao.ac.jp/hscMap4/
2019年5月時点での最新版は、hscMap4です。2018年版(hscMap2)にもアクセスできます。
図1:hscMapの初期画面(2018年版)。背景に見えている多数の点は、(ヒッパルコス星表に収録されている)近傍の恒星の位置を示しています。この初期画面では、いわゆる秋の星座、冬の星座が見られます。赤経(天の経度)線・赤緯(天の緯度)線も示されており、縦の赤線が赤経0h 0m 0s、横の赤線が赤緯0度(天の赤道)です。画面上にメニューバーがあります。
HSCのデータは、緑色の枠内にかくれています。この四角い枠の領域ひとつひとつをトラクト (tract) といい、トラクトごとにデータ処理が行われます。トラクトひとつのサイズは、1.7度 × 1.7度です。(参考までに、HSCの視野は直径 1.5度ですから、トラクトの方が若干大きな領域ということになります。)
HSCのデータがある領域にカーソルをおき、マウスを使って(あるいはタッチパッドを指で操作して)ズームインしてみましょう。カーソルがある場所を中心にズームインされます。例えば、DEEP2-3という名前の領域、複数の緑の枠(トラクト)が連なっているところにカーソルをおき、ズームインしてみましょう。
図2:DEEP2-3領域をズームインした様子。この領域に近づくと、緑色の枠が消え、HSCデータが見えてきます(上)。さらにズームインすると、沢山の小さな点が見え始めます(中)。小さな点ひとつひとつが銀河です。大きく明るい銀河ほど近く、小さく暗い銀河ほど遠くにあると考えられます。所々に写り込んでいる大きく明るく、水平方向にスパイク状の線が入っている天体は、私たちの天の川銀河(銀河系)内にある恒星です(詳細については、下記「本物?人工的なもの?画像中に見える構造」をご覧下さい)。
さらにズームインすると、より暗い銀河が見えてきます(下)。このスケールになると、渦巻構造が見える銀河、円盤がななめを向いたような形の銀河、まるい銀河など銀河の形がはっきり見えてきます。また、銀河の色も多岐にわたることがわかります。
画面の「明るさ」調整
画面右下に表示された「明るい」「普通」「暗い」のボタンで、明るさ(明暗の比率)を調節します(2018年版)。
本物?人工的なもの?画像中に見える構造
hscMapでは、ありのままの観測データを提示しています。そのため、以下のような人工的で本物ではない構造や、天域中での移動が速い天体が見られる箇所などがあります。
明るい恒星の周辺(リアルでない構造)
図4:(左)明るい恒星上に水平方向にスパイク状に見える線は、星の強い光が、他のCCD画素にあふれ出したことによって見える人工的なものです。CCD素子には、光を受けるバケツ(=画素)が並んでいます。暗い銀河からの光を沢山集めるため、積分時間(露出時間)を長くすると、天の川銀河内にある近傍の明るい恒星の光が集まりすぎて画素の中に収まりきらなくなり、隣接する他の画素にあふれ出してしまうのです。
(右)明るい恒星のまわりに、アーク(円弧)状の構造が複数見えています。これを「ゴースト」といいますが、カメラのレンズ面で複雑に反射を繰り返した光が画像として写り込んでいるものです。HSCではゴーストを低減するために、光の透過率を高める「広帯域反射防止膜」を使用しています。それでも透過率が完全に100%でないため、明るい恒星のまわりでゴーストが見えてしまいます。この画像のように、ゴーストが虹色に見えるのは、赤、緑、青をわりあてているそれぞれの波長域(バンド)で撮影した画像において、CCD画素上でゴーストが現れる場所が異なるからです。
人工衛星・小惑星(リアルだが、天域中での移動が速い天体)
図5:(左)赤い直線が見られます。赤色が割り当てられた波長域(i バンド)を観測中に、観測視野内を人工衛星が横切ったためと考えられます。
(右)観測視野内に小惑星と思われる太陽系内の天体が写り込んでいます。小惑星は時間とともに位置を変えます。緑色が割り当てられた波長域(rバンド)や青色が割り当てられた波長域(gバンド)の観測中にも、天体がどんどん移動するため、このような線状に写り込みます。この画像は、同一波長域の複数の画像を足しあわせて作られています*)。例えば、青い(gバンドで撮影された)小惑星の軌跡は3つの線にわかれて見えているので、3回観測を行い、その画像を足しあわせていることがわかります。青い光が途切れているところは、1回目と2回目、2回目と3回目の観測の合間にあたります。
*) 積分時間が長いほど背景のノイズが軽減され、暗い天体が見えるようになります。しかし、観測1回あたりの積分時間を長くすると、天候が変動したり、CCD素子から光があふれ出したりするリスクを伴います。そのため、短い時間での観測を複数回行い、その画像を重ね合わせて背景のノイズを下げます。
観測領域の端(リアルでない構造)
図6:hscMapでは、3つの異なる波長域のデータをそれぞれ赤、緑、青色に割り当てた三色合成の画像をご覧いただいています。しかし、観測領域の端では、特定の波長域のデータしか存在しない部分が発生することがあります。また、今回リリースされた第一期データでは、まだ観測されていない領域もあります。
(左)右端で赤く見えているのは、赤色が割り当てられた波長域(i バンド)のデータしかない部分です。また、領域の端では、この画像のようにアーク(円弧)状の虹色ゴーストが複数見えることが多いです。
(右)観測領域の間に黒く抜けているところは、まだ観測されていない部分です。
CCD読み出しエラー(リアルでない構造)
図7:CCDは縦横2次元に画素がならんでおり、各画素で受けた光の強さを電気信号に変換してデータ転送を行います。各画素のデータを読み出す際にエラーが発生すると、並行な光の筋が見えます。
(左)下方真ん中あたりに見える並行な光の筋は、CCD読み出しエラーによるものです。この領域は、z バンドのみで観測されたため、色がついていません。(この画像は、2017年8月17日に観測された重力波源 GW170817 の光赤外線追跡観測データです。詳細は、すばる望遠鏡・観測成果のページをご覧下さい。)
(右)赤色が割り当てられた波長域(i バンド)でCCD読み出しエラーが発生したため、並行な赤色の筋が見えています。その下には、明るい恒星のまわりにゴーストが見えています(ゴーストについては、図4をご参照下さい)。
天の川銀河内のガスや塵の影響(リアルな構造)
図8:空に現れる巻雲(すじ雲)のようなパターンが淡く現れることがあります。この画像のように、SSP Color Mixer ウィンドウの1本目のバーを使って画面を明るくすると(つまみを右にすると)より顕著に見えるようになります。このような構造をシラスといいますが、私たちの住む天の川銀河(銀河系)の中にあるガスや塵が、光を散乱しているものです。HSC-SSPでは、天の川銀河内の天体の影響を受けにくい、夜空に帯状に見える天の川から離れた領域を観測していますが(天の川は、私たちの銀河を中から見ている姿です)、天の川に比較的近いVVDS領域で、このようなシラスがよく見えます。