宇宙と光のこと ~天文学を読み解くヒント集~

スペシャルサイト
「多波長で観る宇宙」

その波長で何が見えるのだろうか(波長ナビ)
どんな画像が撮られているのだろうか(画像ギャラリー)
多波長観測の全体像をつかむ(波長ガイド)

人間の眼で見ることのできる可視光線で写し出される宇宙の姿は、宇宙で起きている様々な出来事のほんの一部にすぎません。現在の天文学では、さまざまな種類の望遠鏡を建設し、宇宙から届く幅広い波長の光をとらえることで、宇宙の誕生と進化、星や惑星形成の謎に迫ろうとしています。ハワイ観測所のすばる望遠鏡や岡山天体物理観測所で活躍する光学赤外線望遠鏡、野辺山宇宙電波観測所や水沢VLBI観測所の電波望遠鏡、太陽観測衛星に搭載した紫外線望遠鏡やX線望遠鏡など、各地で多数の望遠鏡を運用している国立天文台も、例外ではありません。

スペシャルサイト「多波長で観る宇宙」は、宇宙をさまざまな波長で観測することの科学的意義と重要性に触れるとともに、鮮やかな画像で宇宙の美しさ、面白さを感じていただける、天文学を読み解くヒントにあふれたサイトです。ここでは、このサイトを初めてご覧になる方に向けて、操作方法をご案内します。

その波長で何が見えるのだろうか(波長ナビ)

「START」から導かれる短いイントロダクションに続いて表示される画像は、衝突中の二つの銀河「アンテナ銀河」です。画面下部には、最も波長の短いガンマ線から最も波長の長い電波まで、天文学の観測に用いられている電磁波をカバーしたナビゲーション・バーが表示されています。気になる波長の場所をクリックしてみましょう。その波長で撮影したアンテナ銀河の中心部が拡大表示されます。異なる波長をクリックすると、同じアンテナ銀河を同じ画角で切り取ったにもかかわらず、波長によってその見え方が大きく変わることが分かります。

それぞれの画像は、いったい何を映し出しているのでしょうか。画面をスクロールするか、画面右側のメニューを一つ進むと、その波長で観測した時に注目するべき領域がポイントされます。二つの銀河が衝突しあう現場では、星の材料となるガスや塵の集まりから、生まれてきた若い星、死んでいく星の爆発による高温のプラズマまで、さまざまな現象が折り重なっています。多波長で観測することで、ダイナミックな宇宙での活動をそれぞれ浮かび上がらせることができるのです。

次のメニューでは、その波長でどのような天体・領域が見えているのかを一覧できるようになっています。また、波長によっては、多波長観測がもたらしてくれる様々な情報をより詳しく理解するためのコラムが用意されています。

どんな画像が撮られているのだろうか(画像ギャラリー)

右側のメニューを最下段まで進むと、各波長で撮像された天体画像のギャラリーを閲覧することができます。銀河や恒星、星の誕生する冷たいガスや塵、超新星残骸、そして惑星や太陽など、各種の天体の、可視光線だけでは映し出せない多様な姿を紹介しています。左下の画像リストから、興味のある画像を選んでみましょう。

これまで見てきたように、同じ天体でも、違う波長で観測すると別の構造をとらえることとなり、その姿は全く変わって見えます。その画像でどのような特徴を読み取ることができるのか、キャプションで詳しく説明しています。天体によっては、キャプション本文中のボタンで特定の波長の画像を抽出したり、他の波長の画像と切り替えたりできるものがありますので、見比べてみましょう。

多波長観測の全体像をつかむ(波長ガイド)

ここまで、様々な波長で観測することで、読み取ることのできる宇宙の情報が豊かになる様子を見てきました。天文学における多波長観測の重要な意義を、総合的に把握するために役立つのが、画面最下部のボタンから展開される「波長ガイド」です。ここでは、現在の天文学が、幅広い波長域の電磁波をどのようにカバーして観測研究を行っているのかを俯瞰することができます。

[波長と望遠鏡]
天体望遠鏡は、それぞれ観測する波長帯を定めて設計されます。そのため、一台の望遠鏡で宇宙からの光のすべてを読み解くことはできません。世界の研究機関では数多くの望遠鏡が開発、運用され、それぞれの特徴を生かして観測を行っています。このコーナーでは、現在世界で運用されている主要な望遠鏡がどの波長帯を利用して観測しているかを一覧にしています。それぞれの欄をクリックすると、望遠鏡の紹介を見ることができます。明るい色で示されているのが、国立天文台の運用する望遠鏡です。

[波長と観測対象]
異なる波長で観測することによって、天体の別の姿が映し出される様子を見てきました。天体が電磁波を放射する基本的なメカニズムの代表的な一つが熱放射です。天体は温度に応じたエネルギー分布で電磁波を放射し、最も強く放射するピークも温度によって決まるのです。宇宙では、非常に高温のプラズマから、極低温の分子ガスまで、幅広い温度にわたって物質の状態が変化しています。それぞれ状態の異なる領域を観測するためには、温度に対応した波長の電磁波で観測する必要があるのです。

[波長と大気透過]
波長の短いガンマ線やX線から、波長の長い電波まで、幅広い電磁波が天体から放射されています。しかし、宇宙からの光のすべてを地上で観測できるわけではありません。地球を取り巻く大気中の分子が特定の波長の電磁波を吸収するため、地上まで到達する電磁波は可視光線と電波の一部だけです。このコーナーでは、それぞれの波長の電磁波がどの程度の高度まで透過してくるかを示しています。紫外線よりも波長の短い電磁波や大部分の赤外線は、大気を逃れて宇宙空間から観測する必要があります。

2015.08.03