宇宙と光のこと ~天文学を読み解くヒント集~

レーザーで星をつくる

地上の天体望遠鏡は、地球の大気を通して宇宙を観ています。大気が揺らぐと光が乱れ、星の像が悪くなってしまいます。これは、標高4000mで大気が薄いマウナケア山頂でも例外ではありません。せっかくすばる望遠鏡が天体の細かい構造を見分ける高い能力を持っていても、この大気の揺らぎが邪魔をします。これを解決するために「補償光学」が活躍します。基準とするガイド星のみかけの明るさが大気の影響で時々刻々と変化する様子をモニターし、光の波面の乱れを計算して瞬時に補正するのです。観測天体の近くにガイド星が無い時のために、高出力のレーザー光線を照射して、高度90kmの上層大気中にあるナトリウム原子を発光させ、人工的にガイド用の“星”を作り出すのがレーザーガイド星生成システムです。これらを組み合わせた補償光学によって大気の揺らぎをリアルタイムに補正し、すばる望遠鏡は本来の空間分解能を発揮できるのです。


2015.11.24