分光宇宙アルバム

著者:渡部潤一

この連載企画で読者のみなさんに紹介したかったこと

一般書では「月には大気が無い」と書かれることがしばしばあります。しかし、大気の無い太陽系天体と思われていた水星や月に、極めて希薄な大気があることがわかっています。さらに、こうした大気は、変動しているようです。もちろん天体の重力の束縛から逃げ出すことができる状況なので、常に供給されなくては成りません。そして、これら希薄な大気の起源は、まだよくわかっていません。観測をするにも、極めて明るい月の傍らでの、大気の極めて弱く微かな輝線を捉える困難があります。

流れ星についていえば、ひとつひとつの正確な出現予測は不可能なために、これまで分光観測をするのは、とても難しい状況でした。そんな中でも、最近では理論的な研究も進み、流星については、母親である彗星の軌道さえわかっていれば、その流星群の出現する日時の予測なども、かなり正確にできるようになってきました。こうした出現の予測に沿って、分光観測データも積み上げられつつあります。

この「分光宇宙アルバム」では、そのような困難を抱える観測を、どのようにして乗り越えつつあるか、という現状を知って欲しいと思いました。

現在の研究とこれから研究してみたいこと

私は、彗星や流星などの太陽系小天体の観測的研究をずっと行ってきました。今後は、彗星から流星群、そして群れとして認識できなくなる散在流星に至る流星の進化の様子や、他の惑星への流星現象についても追求したいと思っています。

著者データ

氏名
渡部潤一
所属
天文情報センター
職名
教授
専門分野
惑星科学

* 2012年10月現在