分光宇宙アルバム

05太陽のフラウンフォーファー線

太陽の光をプリズムを通してみると、虹色に光が分解されて見える。詳しくみると、連続的な放射のなかに、暗い筋が無数に存在していることがわかる。太陽大気の主成分である水素や微量に含まれるカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄などの不純物が、内部から来る光を特定の波長だけで吸収するので、暗線が現れるのである。

代表的な暗線は、その発見者の名前をとってフラウンホーファー線と呼ばれる。フラウンホーファーは、強く見える暗線に、波長の長い方、すなわち、赤い方から順番に、A、B、C、、、というようにアルファベットで名前をつけていった。例えば、D線はナトリウムが、H線・K線はカルシウムが作る暗線としてよく知られている。そのなかには、太陽起源のものではなく、地球大気の吸収でできる暗線もまざっていた。

フラウンホーファー線は、実は、太陽研究者の生命線である。暗線の深さを調べると温度が分かるし、暗線の波長の移動を調べると運動が分かる。もし、太陽にカルシウムや鉄などの不純物が存在しなかったら、どうなるか。暗線は見えなくなってしまい、太陽大気の運動や温度を詳しく調べることができないので、研究者としてはお手上げである。不純物のおかげで太陽のことを深く知ることができるのである。

図1:乗鞍コロナ観測所25cmコロナグラフで観測された太陽のスペクトル画像とフラウンホーファー線(C, D, E, F, G, H, K)

補足解説太陽大気の3次元構造

暗線は光が吸収されることでできるので、その波長で見ると大気の透明度が低いことを意味している。大気が不透明だと太陽の外側の方しか見ることができない。逆にこれを利用すると、普段目で見えるところより外側の大気を見ることができる。大気の透明度は暗線によって違うので、複数の暗線を組み合わせると、太陽大気の色々な層を見ることができ、3次元構造が分かるのである。画像は「ひので」可視光望遠鏡がフラウンホーファー線で観測した黒点。Gバンドでは光球と呼ばれる太陽表面が見えるが、H線やC線(水素α線)を使うと、彩層と呼ばれる外側の大気層の様子を見ることができる。

図2a

図2(a):Gバンド(炭素水素分子)

図2b

図2(b):H線(カルシウム)

図2c

図2(c):C線(水素)

記事データ

公開日
2011年11月16日
天体名
太陽
観測装置
乗鞍コロナ観測所25cmコロナグラフ
「ひので」可視光望遠鏡
波長データ
可視光線

この記事が掲載されている国立天文台ニュース

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