講師紹介:科学プロデューサ養成コース【平成23年度前期】
縣 秀彦
所属・肩書き(役職)・学位など
自然科学研究機構国立天文台 天文情報センター 准教授
科学文化形成ユニット長、普及室長 教育学博士
NHK高校講座講師、科学の鉄人実行委員長、理化学研究所研究主幹ほか
専門分野
科学教育、天文教育、科学コミュニケーション
研究機関からの学校教育支援に関する実践的研究、パブリックアウトリーチと広報に関する研究、4次元デジタル宇宙プロジェクト(http://4d2u.nao.ac.jp/)など。
現在は「科学を文化に!」を合い言葉に広く活動中。
受講生へのメッセージ
科学好きの市民を孤立させないこと、科学好きの子どもや大人を増やすこと、さらに、科学を理解し政策判断が出来る人を増やす上で、皆さんへの期待はとても高まっています。
一緒に力を合わせて、科学を文化に高めていきましょう!
講義名
オリエンテーション、ライティング実習ほか
講義内容
自然,社会,人文いずれの分野においても,その最先端で行われている研究の成果は,直接的に人々の生活に影響を与えるばかりか,時には人々の知的好奇心を刺激し,豊かな文化の形成に寄与している。新たな知の創造を目指す先端的研究機関や大学・企業等では,このような成果をどのように市民に還元しているのだろうか?
私の講義・実習においては,ここ数年大きく変貌しつつある「科学コミュニケーション」活動に焦点を絞り,受講者と共にコミュニケーション・スキルを高めていきたい。
履修上の注意
事前に質問項目や議論したい内容等があれば,メモ書きし,講義の最初に提出してください。出来る限り質問にお答えします。
当日,資料を配付。
武田 隆顕
所属・肩書き(役職)・学位など
自然科学研究機構新分野創成センターイメージングサイエンス研究分野専門研究職員
専門分野
天文学(惑星科学)の分野での数値シミュレーションを行っていたことをきっかけに、大規模シミュレーションデータを中心に可視化や映像化を行う。現在は天文分野以外も含めて数値データや測定データなどの可視化、映像化、可視化用のツール作成などを行っている。
講義名
科学と映像クリエーション
講義内容
科学文化形成ユニットでの履修コースは、クリエータコースと、プロデューサコースに分かれている。これは映画製作で言えば大雑把に現場スタッフから監督まであたりの役割と、企画立案や製作費集め、配給、興行といった役割で分けているといえる。これらはお互いに何をどうしているのかをまったく知らなくては(多分)なかなか良い映画製作はできないだろう。プロデューサコースを履修するにあたってそもそも研究データから可視化や映像化を行っている現場では何をどうやって絵を作っているのか?に関して、4D2Uプロジェクト及びイメージングサイエンスでの例を挙げて説明する。
履修上の注意
特になし
永井 智哉
所属・肩書き(役職)・学位など
国立天文台天文情報エンター科学文化形成ユニット専門研究職員
博士(理学)
専門分野
かつての専門は理論天文学で星形成過程の理論的研究を行っていた。現在は科学と社会を繋ぐプロデュース全般が専門、サイエンスプロデューサ/科学技術・政策ウォッチャー。本プロジェクトでは科学コンテンツに関わる人材育成・知的財産・地域活性化をキーワード(切り口)に研究や活動を行っている。
受講生へのメッセージ
現在は職や報酬が得られるかどうかわからないけれど、「科学プロデューサ」および「科学映像クリエータ」が持つべき素養を身につけ、修了された皆様が活躍することにより、世の中に新しい価値が生み出されると思っています。皆様に大いに期待しておりますので、修了までは大変かと思いますが頑張って下さい。
講義名
知的財産・著作権と国立天文台知財流通
講義内容
国立天文台が保有する4次元デジタル宇宙(4D2U)コンテンツや、すばる望遠鏡が取得した天体画像等をはじめとした科学資源という知的財産を新たに社会で広く利活用できるよう、起業、産業化、ビジネス化等への橋渡しする「科学プロデューサ」として知っておくべき、国立天文台における広報普及活動や知的財産の流通を活性化させる現状の取り組みを本講義において紹介する。
講義の中では、ビジネス化をしていくにあたっての課題や方策についても受講生と議論したい。
履修上の注意
国立天文台のWEBページ等で国立天文台が保有するコンテンツとその利用方法や、一般にいう知的財産、中でも著作権の基本について学習してから受講されることをお勧めします。
有本 信雄
所属・肩書き(役職)・学位など
自然科学研究機構国立天文台 ハワイ観測所 教授
総合大学院大学・物理科学研究科長 理学博士
専門分野
星の種族合成と化学進化論、銀河進化論、銀河考古学、球状星団
受講生へのメッセージ
すばる望遠鏡での観測を主な仕事としています。是非、現場の天文学者から何かを学び取って下さい。昨年度から天文学振興募金の援助を受けて、国立天文台の研究者を派遣して授業を行う、「ふれあい天文学」を始めました。
講義名
最新の天文学〜比較惑星学入門〜
講義内容
太陽系の地球型惑星と木星型惑星の衛星の地質学を中心に最新の比較惑星学を紹介します。四つの惑星がたどった同じ過程、にもかかわらず異なった進化。不可思議な惑星地質学の世界に迷い込みましょう。
履修上の注意
高校の物理学の基礎知識があることが望ましい。
尾久土 正己
所属・肩書き(役職)・学位など
和歌山大学観光学部教授(学生自主創造科学センター長)・博士(学術)
専門分野
天文学・天文教育では、現在、学内に宇宙教育研究所を設置中で、電波望遠鏡を使った銀河系の地図作り、成層圏気球を使ったバルーンサット、超高精細のドームシアターを使った日食等の生中継などの研究を行っている。一方、観光学の方では、ミュージアム(天文台やプラネタリウムを含む)の観光学からのアプローチによる新しいマネジメントや、日食やオーロラなどの目的型旅行やグリーンツーリズムなどについて研究を行っている。
受講生へのメッセージ
全国には数百の天文台やプラネタリウムがあります。また、日食ツアーを企画すれば多くのツアー客が集まることもあります。さらに、近い将来には宇宙旅行も民間企業によって始まろうとしています。科学というとこれまでは教育現場でしか語られませんでしたが、今後成長が期待される観光分野に科学を持ち込むことで新しい市場が生まれるのではないでしょうか?
講義名
地域再生と観光
講義内容
全国には市民への公開を目的とした公開天文台やプラネタリウム館がそれぞれ数百館ある。ところがその多くが運営に苦労しており、不況の中、閉館になる施設も増えている。多くの来館者は教育目的ではなく、観光目的で訪れており、運営側と利用者の間の不一致が生じている。ここに新たに観光学からのアプローチを導入することで、施設の活性化を図り、地域全体の再生の核にできるはずである。また、日食やオーロラツアー、そしてまもなく始まる宇宙旅行など、観光業界の中で宇宙は新しい観光資源になろうとしている。地域や観光に関心を向けることで、教育現場で行き詰まっていた科学文化の新しい展開について議論したい。
履修上の注意
特になし
柴田 晋平
所属・肩書き(役職)・学位など
山形大学理学部物理学科・教授
理学博士(宇宙物理学)
専門分野
高エネルギー天文学(X線やガンマ線、宇宙線などの高エネルギー放射の発生機構の理論的研究)、磁気圏の構造の研究、特に、パルサー磁気圏の粒子加速と構造を研究し、世界に先駆けた成果を提出している。理科教育全般にも興味があり実践している。
NPO法人小さな天文学者の会を立ち上げ、宇宙を見て、感じて、楽しむことにより豊かな心をはぐくむ社会づくりに努めている。その一環として星空案内人(星のソムリエ)資格認定制度を創始し、現在全国に普及している。
受講生へのメッセージ
自分の中の自然を宇宙を見たり感じたりする中で維持してほしい。自分自身が宇宙を含めた自然の一部であることを感じて生きてほしい。
講義名
科学普及NPO法人の運営の実際
講義内容
科学普及とはいったいどんな意味を持っているのでしょう。
NPO法人とは一体何でしょう。社会的な役割はなんでしょう。
NPO活動によって科学教育はどのように展開できるのでしょう。
実際にそのような活動はどのように運営されるのでしょう。
上記の活動は人間にとって意味あることなのでしょうか。
このような問題について議論します。皆さんにも一緒に考えていただき、あなた自身の科学プロデュースのなかに生かしていただけるように講義したいとおもいます。
履修上の注意
出来る限り質問をして自分の疑問をぶつけてください。
保坂 直紀
所属・肩書き(役職)・学位など
読売新聞東京本社科学部次長、博士(学術)
専門分野
新聞に科学記事を書く仕事を20年以上やってきました。最近は、もっと良質な科学情報を伝えるにはどうすればよいのか、学術的な研究もしています。
受講生へのメッセージ
新聞の科学報道に対する疑問は、みなさんもきっと持っていると思います。建前に終始せず、みなさんと本音で議論することを楽しみにしています。
講義名
報道と科学
講義内容
新聞に科学記事はどのようにして載るのかをお話します。新聞の読み方を講義しようというのではありません。科学を一般市民に短い分量の記事で伝えようとすると、とたんに困難に直面します。「科学を正しく伝えることはできるのか」という根源的な問題が、その一例です。科学を伝えることの難しさを、新聞を例に考えてみようというのが、この講義の趣旨です。
履修上の注意
新聞には、科学を伝えるメディアとしての長所と短所があります。新聞の科学報道に対する疑問を、たくさん抱えて参加してください。
松浦 晋也
所属・肩書き(役職)・学位など
ノンフィクション・ライター/科学技術ジャーナリスト
専門分野
宇宙開発を中心に、ウォッチングと執筆活動を続けている。その他、情報通信・放送、ネットワークなどもウォッチングと執筆の対象。
受講生へのメッセージ
インターネットの出現により、「情報を隠すコスト」は急上昇し、「情報を広める コスト」はかぎりなく安くなりつつあります。私たちは「隠す」より「広める」ほうが安いなという前代未聞の時代を生きているのです。そんな未踏の時代をどうやって理解し、どのように対応するのかを考えます。
講義名
科学情報の扱いとリテラシー
講義内容
ネット以前・ネット以降で、報道のありようは激変した。あらたなテクノロジーが次々に出現している今、年単位の素早い変化が続いている。2009年はツイッターとUStreamの年だったが、今年もまた大きな変化がやってくるだろう。
そのような環境下でメディアの役割もまた変化せざるを得ない。確実さ、正確さ速報性、すべてが変化しているが確たる未来はまだ見えない。変化し続ける報道のありようを、松浦の体験に即して語り、一緒に考えてみたいと思います。
履修上の注意
特にありません。可能ならば、10年前、20年前、30年前のテレビ番組、新聞、雑誌などを、縮刷版、YouTubeなどで探して時代を意識した上で見たり読んだりしておいて下さい。
伊東 昌市
所属・肩書き(役職)・学位など
自然科学研究機構国立天文台天文情報センター広報普及員
教育学修士
専門分野
理科教育
天文教育
受講生へのメッセージ
古の昔から、人々は我々はどこに居るのか?周りはどのようになっているのだろうと興味を抱き続けて来ました。太陽、月、惑星などの天体がどのような運動をしているのかその周期性を調べることによって、かなり詳しく解析していました。それが天球儀や天体運行儀を作りだし、ついにはプラネタリウムを生み出してきたのです。
私の講義では、古代から現代にいたるまで、人々が宇宙を理解するためにどのような装置を作り出し、やがてプラネタリウムを作り出すまでの過程をたどってみます。そして20世紀末から爆発的に発展し理解が進んだ天文学や宇宙観を、どのように表現出来るのか最新のデジタル・プラネタリウムの進展についてレビューいたします。また、世界のプラネタリウムや科学館の現状を紹介します。受講生の皆さんは科学プロデューサとして、興味や面白さを伝えるときの具体化の手段を考える必要があります。つまり概念だけではなく具体化しなければ伝わらないということを意識し、具体的にイメージ化することを心がけてください。それから、現代社会では、例え子どもを対象とするプロデュースであっても、かなり高いクオリティーが求められると考えるべきでしょう。
講義名
プラネタリウム館の今
講義内容
宇宙観の発展と、それを表現する手段としての天文教具がプラネタリウムとして集大成されたと云えます。デジタル映像を表現する最新のプラネタリウムの可能性を考えます。
履修上の注意
受講生の皆さんは、自分が何に興味を持ち、それを他人に伝えるときにどのような表現をしたいと考えるのか、考察しておいてください。
保谷 彰彦
所属・肩書き(役職)・学位など
自然科学研究機構国立天文台天文情報センター科学文化形成ユニット研究支援員
専門分野
受講生へのメッセージ
講義名
ライティング実習
講義内容
履修上の注意
中島 秀男
所属・肩書き(役職)・学位など
株式会社乃村工藝社 PPP事業部 事業部長
青山学院大学 総合文化政策学部 非常勤講師 「文化施設経営論」
- 団体活動歴
- 1992年 東京クリエイティブ 研究委員会副委員長
- 2003年 国際ユニヴァーサルデザイン協議会 理事
- 入賞
- 1991年 マルチメディアグランプリ 展示映像特別賞(全天周映像ソフト)
- 2001年 インターネット博覧会 新千年紀記念行事懇話会座長賞
専門分野
八王子市こども科学館、おしかホエールランド、食と緑の博覧会ちば90、葛飾区郷土と天文の博物館、立川防災館などの展示映像を企画制作、その後、経営企画部門、情報システム部門責任者などを歴任。2004年9月から、指定管理者制度の施行に伴い乃村工藝社内にPPP統括部を立ち上げ、全国7か所の公立博物館・科学館等の指定管理者として運営管理を行政に代わって代行。現在に至る
受講生へのメッセージ
この講義では、歴史・文化や芸術、科学技術を展示・体験する博物館・美術館・科学館などを中心に、指定管理者制度を導入した施設の経営について解説します。文化施設に求められることやその置かれた状況などを把握することによって、受講者が将来文化施設経営に係わる際の一助となることを目指します。
講義名
指定管理者制度下における文化施設経営の実際
講義内容
現在、指定管理者制度の導入を背景に「公の文化施設」にも「官から民へ」の流れが押し寄せてきており、従来行政によって実施されてきた博物館や科学館の運営(経営)も変化してきている。こうした現状を背景に、指定管理者制度下における文化施設経営について実例を用いて理解を深めることとし、公共性や経済性を踏まえた経営のあり方を考察する。 文化施設は、国や自治体によって設置されたものが多く、「施設を経営する」という考え方が乏しかった。しかし、現在では国においては「独立行政法人」、自治体においても「財団法人」の設置や「指定管理者制度」の導入など、民間もしくは民間手法を採り入れた団体による施設経営が一般的になってきている。 これまでの直営施設では求められなかった経営や文化事業プロデュースの担い手が必要とされており、事業に携わる際の知識のひとつとして役立てていただきたい。
履修上の注意
当日,資料を配付する予定です。
境 真理子
所属・肩書き(役職)・学位など
桃山学院大学国際教養学部・教授
専門分野
主な研究テーマは、メディアリテラシー、科学コミュニケーション、ドキュメンタリー、映像論。放送の送り手と受け手を結ぶ実践的メディアリテラシー研究に取り組んでいる。創造と表現が交差する公共的なメディア空間に関心を持つ。
受講生へのメッセージ
かつてテレビ局プロデューサーになって身にしみて思ったこと。映像表現にはふたつの「そうぞう」の力が必要。創造的であること、同時に人や社会を想像できること。ふたつの「そうぞう」力の翼があって飛翔できること。
講義名
メディアと映像
講義内容
私たちの暮らしは、テレビなどマス・メディアからの情報に取り巻かれ、大きな影響を受けています。一方、メディアの特性については、国語の読み書きのように学ぶことはあまりありません。メディアに囲まれ、触れる、見る、使う、作る、楽しむ生活をしています。授業では、私たちが無意識のうちに接しているメディアについて、その文化的、社会的な特性を問い直しながら、メディアの意味や仕組みを学び、表現のツールとして使いこなすことを学びます。さらに作品を作るときに何が大切なのか、どう考えたらよいのか、応用力のある「知」へと発展させたいと思います。より豊かな表現を生み出すために、メディアの側面から社会と人間を深く理解することを目指しています。
履修上の注意
とくに注意事項はありません。好きな科学映像やテレビ番組があれば、どういうところが魅力なのかを少し考えてきてください。当日、時間があればディスカッションします。
室山 哲也
所属・肩書き(役職)・学位など
NHK解説主幹
専門分野
科学技術、環境、脳科学、宇宙開発など科学全般の解説。
受講生へのメッセージ
ジャーナリズムの極意は「高度な平凡性」です。知らないことを恥ずかしがらず、子供のように発想し、質問し、自分の頭と言葉で考えましょう。伝えるときはだれに何のために伝えるのかを頭において、思い込みや傲慢を排し、一生懸命伝えましょう。自分の好奇心や感動を大切にしましょう。
講義名
科学番組制作の実際・プレゼンテーション実習
講義内容
(科学)プロデューサには様々な資質が必要ですが、まず社会を見る目を持ち、企画を立て、人の話を聞き(「取材力」はすべての基本)、取材し(映像化のロケやメモを取る)、構成し、コメントを書き、テレビであればプレゼンをする、すべての側面を理解していなければなりません。そこで実際に簡単な番組を作ってみて、身をもって体験していただきます。デジカメで撮影し、パワーポイントで編集し、プレゼンまで行います。
履修上の注意
当日デジカメとPPT再生可能のPCを持参ください(グループに分かれるので、PCについては1グループ一台。どなたかのPCをお借りします)
佐々 義子
所属・肩書き(役職)・学位など
NPO法人 くらしとバイオプラザ21 主席研究員
博士(生物科学)
専門分野
サイエンス・コミュニケーション
遺伝子組換え作物・食品に対する理解活動や個人遺伝情報保護、DNA教育などの「暮らしとバイオテクノロジー」を切り口としたサイエンス・コミュニケーションの手法、評価方法、継続的なサイエンス・コミュニケーションを実現するための仕組みづくりに関する実践と研究をしています。
受講生へのメッセージ
サイエンス・コミュニケーションは、市民が科学・技術を理解した上で選び、その恩恵にあずかれるようになるために重要です。サイエンスコミュニケーターのスキルや態度は様々な人と連携と実践を通じて養われます。どうぞ、本コースでは知識の取得だけでなく、互いに学びあえるようなネットワークも築いてください。
私自身は遺伝子組換え作物・食品に対する理解活動や個人遺伝情報保護、DNA教育などの「暮らしとバイオテクノロジー」を切り口としたサイエンス・コミュニケーションの研究に関わってきました。その中で、サイエンス・コミュニケーションの手法には、正解がないものだと感じています。けれど、科学・技術と一般市民が健全な関係を築いていくには、サイエンス・コミュニケーションはどうしても必要なものであり、その継続が必須です。なぜなら、サイエンス・コミュニケーションは、研究者と市民の間の信頼に貢献できるものだからです。
受講生の皆様と、信頼関係をめざしたより対等なサイエンス・コミュニケーションのあり方について考えていきたいと思います。
講義名
サイエンス・コミュニケーション
講義内容
遺伝子組換え作物・食品、農薬、食品添加物に対する市民の不安や食品回収の報道からわかるように、これらの技術や製品が食料増産、安全な食物確保のために発明されたことがメディアや市民に理解されていない現実がある。
サイエンス・コミュニケーションには科学的な好奇心を満たし豊かな文化を形成すると同時に、科学・技術と社会の健全な関係を築き支える役目がある。そのためにはサイエンス・コミュニケーションの手法の研究や、それに関わるコミュニケーターや継続して実施していく体制についての検討が必要である。
本講義においては、市民に最も身近なサイエンス・コミュニケーションであるサイエンスカフェや実験教室などを例に、サイエンス・コミュニケーションを実施する立場から、そのあり方、運営などについて考えたい。
履修上の注意
サイエンス・コミュニケーションの実践に関わる質問などは6月末までにメールを下さい。そのような内容を講義に織りこむようにしたいと思います。当日、資料を配布します。
平田 光司
所属・肩書き(役職)・学位など
総合研究大学院大学・教授(全学事業担当学長補佐)・理学博士
専門分野
大型加速器の理論研究を行いつつ、科学と社会の間に発生する諸問題の研究(科学技術社会論)を行っています。最近は、特にトランスサイエンス(科学的な問題だが、科学では答えが出せないような問題)と科学コミュニケーションについて研究中です。
受講生へのメッセージ
社会と科学をつなぐ科学コミュニケーションでは、最先端の科学をわかりやすく社会に伝える、だけでは無く、社会の興味、関心を背景に科学、科学者を取材、分析、批判することも必要です。社会・科学間の双方向的で生産的な相互作用を担うコミュニケータを目指してほしいです。
講義名
科学と社会
講義内容
「どんな研究でもいずれ社会の役にたつ」「基礎科学が進歩しなければ社会に役立つ応用も生まれない」「社会が科学を支持しないのは科学知識が足りないのが原因だ」というような、多くの科学者が持っている「素朴」な科学感を批判し、社会の中で科学が果たしている役割について、できるだけ多面的に議論したい。
履修上の注意
特になし。