分光観測~伝統と最近の進歩
天文学では多くの場合、天体からの光を分析することにより、宇宙についての情報を得ています。強力な分析方法のひとつが、光を波長に分解して測定する分光(スペクトル)観測です。空にかかる虹は、水滴によって太陽光が波長に分けられたものですので、虹を眺めることは太陽を分光観測しているといえます。
19世紀から本格化した分光観測によって、宇宙の理解は飛躍的に進みました。すでに100年以上の歴史をもつ分光観測ですが、最近の進歩には著しいものがあります。原理は同じであっても、従来考えられなかった精度が可能になったり、格段に効率よく観測できるようになったりすることで、新しい天文学が切り拓かれた例もあります。各記事では、伝統をふまえつつ、そのような進歩をご紹介します。
宇宙の初代星と元素の起源
自分自身の研究としては、これまで星(恒星)の分光観測をずっとやってきました。星を観測すると、星の進化や大気構造はもちろんのこと、銀河の構造や進化、あるいは星の周りの惑星など、宇宙のさまざまな天体や現象を調べることができるのが面白いところです。最近は主に、ビッグバンから数億年に誕生した星たち、つまり宇宙の初代星や、その後に生まれて初期の銀河系を形作って行った星たちについて調べています。また、分光観測の精度を高めて、いろいろな元素の同位体組成の測定を進め、宇宙のなかでの元素合成の理解を深めたいと思っています。
著者データ
- 氏名
- 青木和光
- 所属
- 光赤外研究部
- 職名
- 助教
- 専門分野
- 恒星物理学、天体分光学
* 2011年11月現在