分光宇宙アルバム

著者:勝川行雄

この連載企画で読者のみなさんに紹介したかったこと

太陽は、星の大気で発生する様々な活動現象を詳しく観測できる唯一の恒星です。目で見るとのっぺりとした表面のところどころに黒点が見えるだけですが、分光すると刻一刻と変化する様々な表情を見ることができます。黒点の周辺は活動現象の宝庫で、プラズマ噴出や巨大爆発(フレア)が頻繁に発生します。われわれ研究者は、活動現象がどのように引き起こされるのか、それがどのように惑星間空間や地球に影響を及ぼしているのかを研究しています。そのためには、太陽大気の温度や運動などの物理情報を調べることが必要です。活動現象のエネルギー源となっている磁場を測定することも大切です。他の恒星と比べるとはるかに近いところにある太陽ですが、磁力計を持っていって磁場を直接測定することはできません。そこで威力を発揮するのが分光観測です。太陽からやって来る光を分光するとその光に含まれている運動や磁場などの情報を読み解くことができます。この「分光宇宙アルバム」では、そのような多面的な太陽の分光学をご紹介します。

現在の研究とこれから研究してみたいこと

私は、「ひので」衛星を使い、太陽大気の加熱原因を探る研究をしています。磁気エネルギーの急激な解放とともに高速の流れが見つかれば太陽大気の加熱問題に決着をつけることができます。分光観測を駆使してその現場をおさえることを目指しています。

著者データ

氏名
勝川行雄
所属
ひので科学プロジェクト
職名
助教
専門分野
太陽物理学

* 2011年11月現在