この連載企画で読者のみなさんに紹介したかったこと
宇宙に漂うダスト(ちり粒)と聞くと、銀河や恒星などに比べてはるかに小さく、取るに足らない存在というイメージを持たれるかもしれません。しかしそんなダストが、実は私たちが住む地球のような惑星の原材料となるのです。まさに「ちりも積もれば」の世界。そしてまた惑星の生い立ちと解き明かすヒントをかすかな光で教えてくれるのも、宇宙のダストなのです。
中間赤外線と呼ばれる波長での分光観測が本格化してから、まだわずか30-40年ほど。400年以上の歴史を持つ観測天文学の中では、まだまだ歴史の浅い分野かもしれません。しかし近年、日本のすばる望遠鏡や赤外線天文衛星「あかり」、米国のスピッツァー宇宙望遠鏡などの活躍により、宇宙のダストについて地球に存在する鉱物と直接比較が可能なほど高精度なスペクトルが取得できるようになってきました。この「分光宇宙アルバム」では、最新の赤外線分光観測に基づいた惑星材料物質の研究の一端をご紹介したいと思いました。
現在の研究とこれから研究してみたいこと
私は、赤外線観測や宇宙鉱物学の手法・考え方を使って、惑星形成過程の途上にある「原始惑星系円盤」や「デブリ円盤」の生い立ちと進化を探る研究をしています。小惑星探査機「はやぶさ」の活躍などによってさらに理解が深まりつつある太陽系物質とも比較しながら、惑星形成過程の多様性と普遍性について追求したいと思っています。
著者データ
- 氏名
- 藤原英明
- 所属
- ハワイ観測所
- 職名
- 広報担当サイエンティスト
- 専門分野
- 宇宙鉱物学、赤外線天文学
* 2013年1月現在