この連載企画で読者のみなさんに紹介したかったこと
天文学の入門書を見ると、超新星は星全体が吹き飛ぶ大爆発のことで、限界質量を超えた白色矮星が示す核爆発型超新星と、重い恒星が進化の最終段階で示す重力崩壊型超新星とがあることが判ると思います。 より詳しい教科書ですと、重力崩壊型には、水素に富んだII型の他に、水素は欠乏しているがヘリウムに富んだIb型、水素もヘリウムも欠乏しているIc型があると書かれていると思いますし、さらに細かい分類まで言及されているかもしれません。では、いったいどのような親星がII型、Ib型、そしてIc型の超新星になるのでしょうか? みなさんがご覧になる入門書にはどのように載っていますか? これら、超新星の型と親星との関連については、まさに現在、盛んに議論されているところ。 ホットで興味深い分野であり、入門書に広く載るほどにはまだこなれてはいない、という風に言えると思います。
私が超新星の研究に関わり出したのは2002年、すばる望遠鏡のFOCASという観測装置の試験観測でIc型極超新星SN 2002apの観測を行ったのが始まりでした。それからわずか3年、超新星の研究に精通した国内外の共同研究者の提案で観測し出したIb型超新星SN 2005czが、重力崩壊型の中では最も軽い部類に属するIb型超新星の候補として、これほど注目を浴びることになるとは、当初思っていませんでした。仲間の慧眼に敬服したものです。このアルバムでは、爆発から約半年というちょうど良いタイミングで、貴重なすばる望遠鏡の観測時間の割り当てを頂いた幸運、そして一見不可思議な「変わり者」超新星の、その親星の描像を合理的に示すことが出来た達成感を伝えたかったのですが、如何でしたでしょうか。
現在の研究とこれから研究してみたいこと
引き続き、重力崩壊型超新星とその親星の関係を明らかにして、大質量星の進化の形態を明らかにしていきたいと考えています。 ここ数年は、広島大学の有効径1.5メートルかなた望遠鏡(旧・国立天文台赤外シミュレータ)をホーム望遠鏡として爆発初期の明るい時期の超新星を可視光と近赤外線でつぶさに観測しつつ、爆発後期の暗い段階には大口径のすばる望遠鏡で観測するといった連携観測を進めていますし、それと並行して、かなた望遠鏡の特徴ある装置を活かして、ガンマ線バーストの初期残光の偏光観測による放射領域の磁場構造に関する研究という、世界的にもユニークな観測も行っています(良いサンプルはなかなか現れませんが)。今後は、超新星やガンマ線バーストの研究を続けながらも、この「偏光」を活かした新しい観測天文学の推進により力を注ぎ、将来的には、全天可視偏光サーベイをいち早く実現して、恒星の質量放出の非球対称性や星間ダスト、星間磁場など、様々な天文学に貢献可能な基礎データを獲得したいと考えています。
著者データ
- 氏名
- 川端弘治
- 所属
- 広島大学 宇宙科学センター
- 職名
- 准教授
- 専門分野
- 光学赤外線天文学
* 2013年6月現在