この連載企画で読者のみなさんに紹介したかったこと
「X線で宇宙を見る」それが私の研究ですが、多くの人にはイメージがつかめないようです。夜空に輝く天体は、目に見える光だけではなく、他の波長の光、たとえばX線でも光っているというけれど、X線とは何?X線の分光って何?何がわかるの?
この連載企画では、この身近に感じられない(と多くの人が思う)X線観測、X線分光に、少しでも親しんでもらいたい、と思いました。地上でX線を使うのは、病院のレントゲン写真だったり、空港の手荷物検査だったり、「X線を当てた時の影」を見るような場合です。しかし、天体を観測する場合、こちらでX線を用意するのではなく、天体自身が出すX線を観測します。
記事で紹介した「銀河団」は、可視光で見た姿とX線で見た姿が全く異なる代表的な天体です。可視光で見ると何もないように見える空間に、実は高温ガスが詰まっていることがX線観測からわかります。X線の観測によって銀河団の見方が大きく変わり、それが、銀河団の形成過程などの宇宙物理につながります。そういった興奮が伝わればうれしい限りです。
現在の研究とこれから研究してみたいこと
私は、X線を出すような高温ガスに注目して、銀河や銀河団などの構造形成を研究しています。とはいいつつ、現在は、銀河団だったら銀河団、銀河だったら銀河について、個別に研究しているのが実状です。将来は、もっと統一的に、研究をしていきたいものです。近い将来としては、記事でも紹介したASTRO-H衛星によって、これまでわからなかったガスの速度を決めることが出来ます。これまで測定出来なかった物理量がわかることで銀河や銀河団の描像も変わるのではないかと思います。
著者データ
- 氏名
- 竹井洋
- 所属
- JAXA 宇宙科学研究所
- 職名
- 助教
- 専門分野
- X線天体物理学
* 2013年11月現在