00編集者からのメッセージ
分光とは
「分光宇宙アルバム」は、機関広報誌「国立天文台ニュース」の連載記事です。普段見かける美しい天体写真と違って、「分光」というとなにやらマニアックと思われるかもしれません。しかし、私たちはこの連載を通じて、読者の皆様が分光データの美しさやその奥深さに触れてもらえればいいなと期待しています。実のところ、天体をよく知るために必要な情報は、分光観測から得られます。美しい天体写真というのは、現代天文学の一面の成果でしかありません。むしろ、天文学者にとっては、分光データこそが、天体がどんな運動をしているか、また、どんな元素でできているかについてのヒントを与えてくれる、宝の山なのです。
「分光宇宙アルバム」連載決定の経緯
2年前のある日、「国立天文台ニュース」の編集委員会で、この「分光宇宙アルバム」の連載が決まりました。「さて、望遠鏡名鑑(前々回の連載)と観測装置名鑑(前回の連載)の次は、どんなテーマの連載にしようか・・・」と、みんなで相談していました。「何かきれいな画像を見せたいよね」、あるスタッフが言います。「でも、きれいな画像はもうたくさん見せているし、プレスリリースでも出しているし・・・。もう、十分じゃない?」、別のスタッフが言います。「じゃあ、分光データは?分光観測の結果はリリースで出しているけど、分光データそのものは滅多に出してないんじゃない?」。確かにそうだと、スペクトルの画像(第02話の画像1参照)を見ると、なかなかきれいです。さらに、分光データは、太陽や惑星、彗星、恒星、星雲、星間物質、銀河、宇宙を理解するために不可欠なものだから、意義も大きいよね、と連載が決まりました。
分光データそのものは、天体画像と違って新聞紙面をにぎわしたり、ニュースでとり上げられることはごく稀です。それに、難しいと思われがちです。そこで、私たちは、このシリーズを通じて、天文学で重視される分光の世界とはどのようなものなのか、さらに、分光データを解析して得られる情報がどれほど大切なものなのかを紹介したいと思いました。こうして、「分光宇宙アルバム」がスタートしたのです。
著者
記事データ
- 公開日
- 2012年9月24日