分光宇宙アルバム

22SDFで探る128億光年かなたの銀河たち

SDF(Subaru Deep Field:すばる深探査領域)は、すばる望遠鏡が最も遠い宇宙を見た領域の1つで、これまでにたくさんの遠方銀河がこの領域内で発見されました。ここに掲げたスペクトルは赤方偏移6.5、地球からの距離約128億光年先の銀河たちのものです。スペクトル上に山のように盛り上がったところが見えますが、これが銀河の持つ水素輝線です。生まれたばかりの若い銀河はこのような水素輝線を持つことが特徴です。銀河によっていくらか輝線の形が異なり、それぞれ個性があることに気づかされます。すばるの得意とする広視野撮像機能を使うことによって、このようにほぼ同じ距離にある銀河をたくさん見つけ出し、遠方銀河の個性や一般的性質を明らかにすることができます。この距離にある銀河はこれまでに45天体分光されていますが、ここではいくつかの例を示しています。すばるが建設される前には、こんなに遠い銀河は1つも見つかっていなかったことを考えると、すばるがいかに遠方宇宙、初期宇宙を切り拓いてきたかを感じることができます。このような観測から、生まれたばかりの銀河の性質や、さらには初期宇宙空間の電離度まで知ることができます。すばるは、観測を開始したハイパーシュープリムカムを使うことによって、このような系統的な探査をより強力に進めていく予定です。

図1:約128億光年先の輝線銀河たち。下から上に向かって遠い銀河になるように並べています。遠くなるに従って輝線(山のようになったところ)がどんどん右側(長波長側、赤い側)にずれていく様子がわかると思います。これが「赤方偏移」です。図の一番下から一番上まで約140Å(1Å=10-8cm)しかずれていませんが、その距離の差は2000万光年もあります。それにしても「赤方偏移」って難しそうな名前ですよね。どなたか、もっと簡単でわかりやすい日本語名をつけてもらえませんか?

補足解説虹の解体

「ニュートンが単純な白光をプリズムで7色に分光したとき、今日の科学の基礎はつくられた。だが、彼の同時代人だったジョン・キーツを初めとするロマン派詩人は“ニュートンは虹をプリズムにおとしめてその詩性を破壊してしまった”と非難した。ニュートンによる『虹の解体』は、天体望遠鏡につながり、ひいては現在、われわれが宇宙について知り得ていることを解く鍵をもたらした。ロマンティックという形容詞で語られる詩人なら誰でも、アインシュタイン、ハッブル、あるいはホーキングが語る宇宙のありさまを聞いて心弾まずにはいられないはずである」(リチャード・ドーキンス著『虹の解体』より)。

記事データ

公開日
2015年2月 日
天体名
SDFにおける赤方偏移6.5の輝線銀河
観測装置
すばる望遠鏡 FOCAS
波長データ
9100Å~9275Å

この記事が掲載されている国立天文台ニュース

この記事が掲載されている
国立天文台ニュース(PDF形式)をダウンロード